読書会の様子 2023年

12月16日(土)

『吾輩は猫である』夏目漱石

参加者11名

 

・笑いの中に人間のおろかさや社会への批判が多く書かれ、楽しく読みましたが時間が足りず読み切れませんでした。最後のシーンまで読みたいと思います。

・漱石の言葉遊び、ちょっと過剰。登場人物で共感できるのは奥さん。自分に似ているのは苦沙弥先生。

・吾輩は猫である。漱石の落語、名人芸です。

・有名な漱石を改めて読み返してみた。一つ一つの話をもう一度細かく確認して再読します。

・「わがはいは猫である」は「するめ」のごとし。かめばかむほど味がある。

・若い頃、読み始めて投げ出してしまったことがあります。今回読み直すことができて良かったです。

・漱石の知識量に感激。

・漱石の作品の中では面白いもので、何度読んでも面白さがある。

・登場人物が個性的で、ユーモラスな会話が落語のようで面白かった。

・どこから読み始めても面白い、ユーモラスな小説でした。年末年始で読み通したいです。

・大変面白い小説でした。読むと疲れるけど面白い。迷亭さんが好きです。後期の作品群よりずっと好き。

 

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 11月18日(土)

『どこ行くの、パパ?』ジャン=ルイ・フルニエ

参加者9名

 

・「どこ行くの、パパ?」切ないけど、フルニエさんのユーモアに励まされる。

・一読して感想が浮かんできませんでした。お父さんの自分の子供に対する思いを正直に書いてあると思いました。

・人に言いたくないことを共有できたら…。この子たちがこの本を読む機会があったとしたら…。

・とてもデリケートな作品でした。障害をもった子供達と暮らすユーモア作家の著者の、辛い思いを語った文章は笑いさえ誘う力がありましたが、考えさせられました。

・皆が平和に生きていく事はたいへんだと感じました。

・ユーモアの力を感じます。

・重い障害の児たちを育てる忍耐に頭が下がる。

・短い文章、上手な表現。若いころの自惚れが思いがけないところからしっぺ返しを食らう有様、当時はありのままの子供たちを愛せなかった自責の念がよく伝わってきた。

・障害についてのユーモアを笑った方が健全なのか。でも、笑えない。

 

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10月21日(土)

『田園交響楽』アンドレ・ジッド

参加者7名

 

・牧師はジェルトリュードを救い出そうとしたけれど、それは思い上がりで、自己満足だったのでは?妻や息子、ジェルトリュードに結果的に不幸をもたらした牧師に対しては、人として夫として許せない気持ちでいっぱいです。

・学生のころ読み始めてよく分からなくて放り出した覚えがあります。今回再読の機会が持てて良かったです。宗教的なところはむつかしくてよく分かりませんでしたが楽しく読めました。ありがとうございました。

・ジイドさん、小説の最後をそんなに急いじゃいけませんよ。辻褄が合わないところがナゾめいていて面白いとも言えるけど。

・良かれと思って行ったことが良い結果を生むとは限らない。この小説では主たる登場人物は不幸せにたどりつく。プロテスタントとカソリックの人生観の違いはよく分からない。

・神はなぜ存在しないのか?

・アンドレ・ジイドと呼ばれていた昭和の時代。アンドレ・ジッドと呼ばれている令和の時代。100歳生きたジイドの実行力、バイタリティを見習わなくてはならない。

・信仰とは(キリスト教に限らず)人間に掟を課すものなのだなぁ。

・ジェルトリュード、世の中はあなたが想像したような美しいものばかりではなかったけれど、神が造った世界をもう少し信じて生きてみたら、さらに美しいものを見ることができたかもしれなかったのに残念だと思いました。

 

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9月16日(土)

『文車日記』田辺聖子

参加者10名

 

聖子節さくれつ!永遠の文学少女!

・古典になじむ良い機会を与えてくれた一冊でした。女性の美しさが何かわかる本ですよ。

・古典に興味がわいた。「更級日記」「和泉式部日記」を読んでみたいと思った。

・日本の古典を少しでもかいま見られてよかったです。

・上代、中古、中世、近世、現代、いつの世も自分の意思をはっきり表現できる女性(男性)はいいなぁ…。

・遥か昔の上流社会で生きる、女性たちのエネルギーの強さをまざまざと感じることが出来た。

・楽しい古典紹介。

・古典は原文では全く手が出ませんが「源氏物語」を始め、数冊、現代かな遣いで読んでみました。平安の雅を感じました。

・ずっと読みたかったけど触れなかった古典が読みやすく読めてよかった。ここから歴史や古典を読んでみたい。

・読み通すのが大変でした。ハイライトシーンを連ねる書き方も、作者の感性も、私には合いませんでした。

 

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8月19日(土)

『されどわれらが日々』柴田翔

参加者10名

 

・若者が社会のあり方を真剣に考える姿勢が新鮮だ。

・政治的な小説という側面も大切な点だが、生き方という側面も多い小説だと思いました。

・ストーリーは難ありだが、人生に正面から真剣に取り組む作者の姿勢に心打たれた。

・読む前は学生の政治的活動の物語かと思っていたが、そうではなく、男女の不幸な愛欲の話だった。男は女の求めいているものに応えられないのだが、そのことには気付かず、女を満足させたと思い込んでいる。

・学校で習った考え方、見方でものを見ている人。

・生は時間つぶしなんてことはありません。

・東大のエリートの頭デッカチぶりに困惑してしまう。正直なところどこがいいのかさっぱり分からなかった。でも皆さんのお話をきけて面白かった。

・何故、この本が読まれて(?)いるのか思い出してみた。

・佐野さん、もうすこし肩の力をぬいて下さいネ。

・この小説の登場人物は東大エリートなので、人生観、結婚観は重く冷たく、残酷さが感じられました。女性に対する宮下の思いはまさにエリート的ですが、そういう時代だったのでしょうか?

 

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7月15日(土)

『家守綺譚』梨木香歩

参加者12名

 

 ・現実と空想とが自然に入り混じってつながっているお話を楽しく読みました。

・花言葉、名前の由来にも興味が出ました。1つ1つのお話も、史実・文学的要素を盛り込んで楽しく、登場人物にも親しみを感じた。大好きな一冊になりました。

・河童、人魚、小鬼などが出てくるのに、現実世界との境界があいまいで、とても心地よい。

・天地の間に、生きとし生けるものが交流・交換・交歓していく世界に心地よさを感じる。

・現実離れした物語なんだけど、自然の細かい描写にうまくマッチして魅力あるものになっている。

 ・梨木香歩=不思議ワールドをたのしみました。

 表紙のかんじから完全に裏切られて、笑いがたえないファンタジー。

・植物の話とは違う、多様なエピソード集。登場する人、植物、動物のかよわさや優しさが書かれている。

・女性作家が男となって、植物に寄せて語られる綺譚として面白く読めました。

・化け物の話は、水木しげるかな?

・高堂がときどき来ますよ、彼は元気ですよ、とお父さんに教えてあげたい。

・若手女流作家が明治時代の男性の小説のテイを取っている所に少し無理を感じてしまった。現代的な表現での小説だったらどう書いたか想像しました。

 

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6月17日(土)

『エリザベート』塚本哲也

参加者11名

 

・読み易い文章で楽しく読めました。中部ヨーロッパの歴史の勉強になりました。

・中欧の歴史を学べてよかった。エリザベートの人生の前半と後半の変化の大きさに驚かされた。

・中欧の歴史をおおざっぱでもつかめるような気がして、大変だったけれど読めてよかった。

・大戦当時のヨーロッパの歴史がとてもよくわかった。点だけだった知識が線になってつながった。

・中欧の歴史・ハプスブルク帝国の消滅を、エリザベートを中心に語られる今回の作品は、とても勉強になりました。

・中央ヨーロッパの歴史を学ぶのに大変有意義。小国の悩み、豊かな国・強い国とどう渡っていくのか、戦争以外にお互いに生きる道をさぐりたいものだ。

・ヨーロッパの小国が大国に翻弄されながらも、最後は自由を取り戻す歴史が、エリザベートと共に見事に書かれた力作だ!

・民族、言語、宗教が複雑に入りくんだ中部ヨーロッパ。魅力的。

・ヨーロッパの歴史を知る良い機会でした。エリザベートが文中に登場しなければ、「山川の世界史」というような歴史教科書か参考書になっていたかもしれない。

・中欧の勉強になり読んで良かった。主人公は好きになれなかったが、「エリザベートがいなければ読み続けるのは難しかっただろう」という意見にハッとしました。

・中央ヨーロッパの近代史小説。勉強にはなったが、読むのに時間がかかりすぎる。

 

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5月20日(土)

『ジョン万次郎漂流記』井伏鱒二

参加者12名

 

・万次郎は日本に帰った後も漂流し続けていたように思える。心労が多かったのだろうと同情する。

・ジョン万次郎は苦難の荒波を乗り越え、やがて日本の政治に大きな働きをした偉大な人でした。子供達にも読んでほしい作品です。

・話がたんたんと進んでいき、伝記を読んでいるようだった。この時代の日本とアメリカの立ち位置がよくわかった。

・面白かった。彼のことはもっと知られてもよいと思う(知らないのは私だけ?)。

・ジョン万次郎を大河ドラマの主人公にしてみたら面白いなあと思いました。

・望郷の念忘れがたし。

・強運と実力のあわせ技で、日本の開国等に尽力した偉人の伝記を読み感動した。

・作品が発表された年代を考えると、米国と日本との関係が難しくなっている時。勇気をもって書いた作品だと感じた。

・万次郎等が助かることや帰国することを諦めずにいたことに心打たれる。万次郎が機会あるごとに寅右衛門や世話になった人を訪ねているのも良い話である。

・シブイ作家、井伏鱒二。

・ジョン万次郎の一代記として楽しく読めました。

・数奇な運命をたどったジョン万次郎に関わった、多くの人々の人間模様が興味深かった。

 

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4月15日(土)

『愛する人々』川端康成

参加者11名

 

・小説の筋ではない、諸々の表現からにじみ出る滋味を味わえる文章。

・川端康成があまり好きではないと思っていたが、他の人の意見を聞けてよかった。気づかせてもらえたこと、新鮮だった。

・川端康成の文体の美しさに驚きました。

・かつての日本人の、奥ゆかしい心のもち様がふんだんに垣間見られる懐かしくもセンチメンタルな作品。

・女性の生き方を描いているようで、実は男性の生き方を教えてくれた作品でした。

・川端はやはりすごい。

・どの一篇も読み終えたら’おわり’とはならず、読者は’その先’を少し想像することになる。余韻というのか、続きを考えさせる終わり方がよいと思う。

・「新感覚派」と言われるだけのみずみずしい文章です。大江とは違った感性の文章でした。奇しくもノーベル文学賞作家の作品が続き、幸運でした。

・それぞれの作品の登場する主人公(男性)は勝手な事ばかり言って頼りないと思いました。その反面、妻はそれなりにたくましく生きているので安心しました。

・情景が目に浮かぶ。あらすじを読むというより、心の動きを読む本だと思う。

・美しい日本語だと思った。短編集は人によって好きな作品が違い、その理由を聞いて気づかされることが多々あり楽しかった。

 

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3月18日(土)

『M/Tと森のフシギの物語』大江健三郎

参加者11名

 

・前回の作品(『芽むしり仔撃ち』)より読み易かった。

・童話のようなタイトルなのに神話や歴史がたくみに盛り込まれ、”フシギ”を感じました。 後半の光さんの登場で、祖母、母との関わりに優しさがあり、温かくなりました。

・神話と伝承の世界から現在へ流れていくうちに、全てが実際にあったことのように思えて、不思議な世界へ迷い込むようだった。

・神話から歴史へとたどりながら、自分を経て息子へと、連綿とつながる人の生。それはMとTの組み合わせで、これからも継続していく。

・本当の話?つくり話?と時々確かめたくなるくらいリアリティを感じたが、一方、もう一歩疑うと「あり得ない」と思ってしまう。そんな不思議な世界。

・神話、民話、歴史、アニメや小説が混在している気がして頭が混乱するけれど、この混乱が面白いと思った。

・そんなに古くないおとぎ話ではあるも、森のフシギはリアルで共感。神話と歴史の織りなす物語はとても興味深いものがあった。

・今までに読んだことがない小説世界でした。脳トレになりました。

・森のフシギ、山合の村、自分の中にもあるかナ!

・聞かされた話であるから、読者が懐疑を抱く事柄について、いちいち検証しなくても構わない、という書き方に思える。息子の光の登場から話がよくなるので、そこまで読み通して最後の味を楽しもう。

・神話時代、歴史時代は面白かったが、最後の光の章は余計だと思った。知的障害のある息子をトリックスターとして見るような親子の情は好きになれない。

 

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2月18日(土)

『あの戦争と日本人』半藤一利

参加者12名

 

・戦争に向かって行く、日本の指導者達の苦悩と、軍人たちの無責任な言動にも驚きました。マスメディアに国民があおられ熱狂していく恐ろしさに納得しました。

・半藤一利 小さな時、戦争を体験した人としては言っておかなければという気持ち。

・膨大な戦争関連資料から良くぞまとめたものだと感心!そして何より分かり易い出来栄えに更に感心!!

・ロシア、ウクライナの状況を見ていると、日本の平和がくずれないか心配だ。今日のテーマの本をもう一度ゆっくり読みなおし考えぬきたいと思う。

・大変面白く読みました。ジャーナリストの視点から書かれた本だと思いました。

・自分の国に誇りを持つのは、他国と比べてGNPとかGDPが高いとかであってはならないと痛感した。

・半藤さんの語り口、おだやかです。

・物語、エッセイを信じてしまう危うさ。けれどそれで真実に近づけたりする?

・著者よりやや年長であり志願や応召で戦場に赴いた若者たちについて、著者の思うところを述べてほしかった。

・読むのが私には大変でした。話し言葉なのでもっと読みやすいかと思ったけれど、私にはたいへんだった。

・一度読みましたが、あまり記憶に残っていません。再読しようと思います。

・皆様が生き生きと発言しているのは、話す機会、しゃべる機会が少ないのではないか。

題材の問題だけではないと思う。一人ずつ一周まわっただけで2時間も経過してしまったのだから。

  

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1月21日(土)

『岬』中上健次

参加者10名

 

・一文の歯切れのよさ、勢いのある文章、とてもひきこまれた。

・こんな所でこんなふうに生きている人々がいる、という不思議さと、真正面から愛情を受けたいという強い欲求は人にとって共通なのかという納得感。

・中上健次を初めて読みました。人物・景色などがしっかりイメージできました。

・母に愛されずに満たされない子供たちが、中々幸せになれない悲しみに、せつない思いが残りました。貧しさだけを理由にしてほしくないとも思います。

・濃い人縁の中で生きていく人達のことを考えながら読み終えました。

・昭和の逞しい映像が浮かんでキター!

・濃厚で閉塞感があり、ほこりっぽさ、匂いを感じる。

・中上健次の血と肉。

・主人公に共感できない。でもラストは勢いがあって、自分でも不思議なくらい盛り上がった。

・いろいろな感想があってよかった。